「日本企業における心理的契約の探索的研究:契約内容と履行状況,企業への信頼に対する影響」(組織科学Vol.42-No.2)滋賀大学 服部泰宏

論文部門


 

「日本企業における心理的契約の探索的研究:契約内容と履行状況,企業への信頼に対する影響」

(組織科学Vol.42-No.2)

滋賀大学 服部泰宏

 

この度は、名誉ある組織学会高宮賞をいただきまして、誠に光栄に存じます。私がこのような賞をいただくことができましたのも、大学院時代から今日にいたるまでご指導いただいている神戸大学の金井先生をはじめとする諸先生方、そして若手に自由な研究環境を与えてくださっている滋賀大学の構成員の方々のおかげだと考えております。また、調査にご協力いただいた方々にも、この場を借りて御礼申し上げます。

 

受賞論文は、日本企業が現在採用している雇用制度の下での組織と従業員との関わり合いを、「心理的契約」の観点から検討したものになります。私が心理的契約に注目した理由は、それがアメリカの研究者によって提唱されたものでありながら、2つの意味で極めて日本的な概念だと考えたからです。1つ目は、日本企業の雇用関係が心理的契約によって支えられてきたことです。Abegglenが『日本の経営』の中で指摘したように、これまで多くの日本企業は、余程のことが無い限り従業員を解雇せず、従業員もまた容易に他の企業に移ることはありませんでした。重要なのは、これが文章化され法的に履行を担保された契約ではなく、書かれざる約束として長きにわたって形成・維持されてきた点です。2つ目は、現在のような雇用制度の変化が、従業員にとって契約の不履行を意味する可能性があるということです。
受賞論文では、 2つの発見事実を得ることができました。1つは、日本企業の心理的契約が、欧米型の人事制度導入の影響を受けつつも、日本型人事制度を依然として反映させた折衷型として成立している可能性があるということ。2つ目は、ある契約については、企業側がそれを守ることが信頼の増加につながるが、それが不履行されても信頼の低下にはつながっておらず、また別の契約については、契約を履行しても信頼の増加にはつながらないが、不履行が信頼の低下につながっていたというように、信頼の増加と信頼の低下は同一の契約によってではなく、それぞれ異なった契約によって規定されていたということです。

 

組織に所属する個人側にとっても、また人事制度を設計する組織側にとっても、心理的契約の内容と履行状況に関する知見は、極めて重要な意味を持つと考えております。私の研究はまだまだ探索的なものですが、これを契機に、多くの研究が蓄積されることを願って止みません。私自身も、今回の受賞を励みとし、この研究テーマでさらなる探求を行っていこうと考えております。今後も、ご指導と鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

 

2010年度 第26回 組織学会高宮賞受賞者ご挨拶


 

論文部門

「人材マネジメントの分権化と組織パフォーマンス―施策運用における意思決定構造に注目して―」

(組織科学Vol.42-No.4)
一橋大学 島貫智行

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