「人材マネジメントの分権化と組織パフォーマンス―施策運用における意思決定構造に注目して―」(組織科学Vol.42-No.4) 一橋大学 島貫智行

論文部門


 

「人材マネジメントの分権化と組織パフォーマンス―施策運用における意思決定構造に注目して―」
(組織科学Vol.42-No.4)
一橋大学 島貫智行

 

このたびは、組織学会高宮賞という大変名誉な賞をいただきまして、誠に光栄に存じます。このような賞をいただくことが出来ましたのも、大学院時代からご指導いただいております一橋大学の守島基博先生をはじめとする諸先生方、貴重なアドバイスを下さいました佐藤博樹先生、SEの古川久敬先生と柴田裕通先生、そして審査をして下さった組織学会の諸先生方のおかげであると考えております。また、多くの議論の中で建設的なコメントを下さった一橋大学大学院の先輩・同僚・後輩の皆さん、調査データの二次利用を許可いただいた東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センターにもこの場を借りて御礼申し上げます。

 

受賞論文は、人材マネジメント(Human resource management:以下HRM)と組織成果の関連について、HRMの意思決定構造(分権-集権)に注目して検討したものです。この論文は、HRM研究のなかでも、戦略人材マネジメント(Strategic HRM:以下SHRM)という、企業や事業所などの組織レベルのHRMと組織成果(企業業績や戦略の達成など)の関連を検討する研究分野に位置付けられます。
一般にHRMという活動には、採用や教育訓練、評価・報酬制度という施策の設計段階と、現場で施策が活用される運用段階の二つがあることはよく知られています。この論文は「HRMが組織成果に影響を与える過程ではHRM施策の運用が重要になる」という発想から生まれたものですが、先行研究ではこの運用段階への注目は殆どなされておらず、また理論的基盤の不十分さや方法論上の問題を抱えつつ、施策の設計に焦点が当てられてきたことがわかりました。
そこで、受賞論文では、HRMに関する意思決定構造(現場マネジャーにHRMの意思決定権限が委譲されている程度)の視点を導入して、HRM施策の運用を「施策と意思決定構造の相互作用」として捉えることによって、HRM施策の設計と運用のそれぞれが組織成果に与える影響を検討できる分析枠組みを考えました。米国企業のデータを用いて統計的に検討した結果、HRM施策と意思決定構造の交互作用項が組織成果に有意な影響を与えることが確認され、HRMから組織成果への影響過程におけるHRM施策の運用段階や、運用段階を左右するHRMの意思決定構造の重要性が示唆されました。
その意味で、本論文の貢献は、僅かではありますが、SHRM研究における理論化の道筋を提示したことにあると思います。SHRM研究は、本来組織レベルのHRMと組織成果を扱う分野ですが、先行研究はHRMから組織成果に至る過程を推論する理論的枠組みが必ずしも十分ではありませんでした。これに対して、本論文は組織論の伝統的な研究分野である意思決定構造の知見を援用することによって、HRMが組織成果に与える影響過程について理論化の可能性を示すことができたと思われます。また、本論文の成果を発展させますと、HRMと組織成果の関連において、意思決定構造のほかにも職務設計や組織階層といった組織構造変数が重要な要因となっている可能性が考えられます。今後は、日本企業を題材として、組織論的視点からHRMと組織成果の関連を検討していきたいと考えております。

 

私自身まだまだ勉強すべきことが多々ありますが、HRMが実践されている現場をより深く理解するとともに、HRM研究の理論的な発展に少しでも貢献できるよう努力していきたいと考えております。今回の受賞を励みとして、今後も研究に精進していく所存です。今後ともご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。このたびは誠にありがとうございました。

 

2010年度 第26回 組織学会高宮賞受賞者ご挨拶


 

論文部門

「日本企業における心理的契約の探索的研究:契約内容と履行状況,企業への信頼に対する影響」
(組織科学Vol.42-No.2)
滋賀大学 服部泰宏

 

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