2016年度 組織学会高宮賞・論文部門受賞者挨拶 「技術者間における知識移転の促進要因-情報獲得者の観点から-」

2016年度 組織学会高宮賞 受賞挨拶

-論文部門-

「技術者間における知識移転の促進要因-情報獲得者の観点から-」

(組織科学Vol.48-No.2

青山学院大学 中内 基博

この度は、栄誉ある組織学会高宮賞を頂くことになりまして、たいへん光栄に存じます。こうした賞を頂くことができましたのは、指導教官である早稲田大学の坂野友昭先生をはじめ、これまでお世話になりました諸先生方の温かいご指導あってのことと深く感謝申し上げます。特に、前職の東洋大学では新進気鋭の多くの若手研究者の方々からたくさんの刺激を頂き、素晴らしい環境の下で研究を行わせていただきましたことに深く御礼申し上げます。また、本論文の質問票調査にご協力いただきました企業の多くの方々にも、この場を借りて感謝申し上げます。

本研究のテーマに取り組む契機となったのは、2011年に惜しくもご逝去された東京大学の天野倫文先生からのアドバイスでした。天野先生には前職の東洋大学勤務時の先輩として、公私ともに様々なご指導を頂きました。あるとき、研究スタイルについてのアドバイスをお願いしたところ、「君の研究は、地に足がついていないね。実証するにしても、もっと現場を回って気づいたことを検証しなくちゃ」と言われたことが私にとってたいへん大きな転機となりました。それまで、トップ・マネジメント・チームの研究を行っていた私は、実際のビジネスの現場を見る経験に乏しく、理論に遊ぶところがありました。そうした私の姿勢を鋭く見抜かれ、温かいご指摘を頂いたことに深く感謝しております。また、本研究の着想についてご相談した際も、たしか企業研修で空港から萩市へ向かう途中の、入り組んだ海岸沿いを走行する揺れるバスの中でしたが、熱心に耳を傾けアドバイスをくださいました。今回の研究が、天野先生の御眼鏡に適ったものになっているとは到底思えませんが、ヒアリング調査などを通して現場で生まれたリサーチ・クエスチョンを実証したことは、小さな前進としてご評価いただけるのではないかと考えております。

本研究は、新製品開発プロジェクトにおける技術者間の知識移転を促進する要因を実証分析によって探求したものです。本稿の主たる関心は、同一部門内の知識移転と部門間の知識移転では、移転の促進・阻害要因が異なっているのかどうかにあります。これは、職能性組織のエンジニアへのインタビューや質問票調査などを通して、私が肌で感じた違和感が発端となっています。同一部門内で移転される情報と部門間で移転される情報の内容や種類がどうやら異なるようだ、そうだとすれば、同一部門内と部門間でそれぞれ移転を促進または阻害するファクターが異なる可能性があるのではないか。ただし、先行研究ではこうした組織の境界が知識移転にどのような影響を与えるかについて、ほとんど注目しておりませんでした。そこで本論文では、同一部門内のコミュニケーションと部門間のコミュニケーションを区別することによって、分析モデルの精緻化を図りました。

もちろん、この研究はまだ途上にあり、論文としては不十分な点も多く、特に理論的貢献に乏しい点が課題であることは承知しております。そうした点から、今回の受賞は奨励の意味合いが強いと考えております。これを励みにして、今後もひとりの学究の徒として、地に足を付けた研究を行いたいと考えております。これからも皆様のご指導とご鞭撻のほどをどうぞよろしくお願い申し上げます。

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