『組織科学』第13回特集論文公募について(2019年5月31日締切・当日消印有効)

特集テーマ「ミクロ的基礎による戦略論の展開」


1. 特集の主旨

過去10年以上にわたって、経営学のマクロ理論では、ミクロ的基礎(micro-foundations)に着目した議論が注目を集めています。組織論、戦略論におけるミクロ的基礎づけとは、組織の行動とその結果という組織レベルの事象について、組織内の個々人が与える影響に着目したものです(Abell, Felin, & Foss, 2008)。その対象は、組織内の個人レベルの要因が組織にどのように影響を与えるのか、組織内の個々人の相互関係がどのように組織的な形態として創発されるのか、組織間関係が組織内の個人の行為と相互関係によりどのように構築されるのかなど多岐にわたります。このミクロ的基礎に焦点を当て、企業の戦略的意思決定を分析するbehavioral strategyという分野も戦略論の一分野として注目されつつあります(Powell, Lovallo, & Fox, 2011)。この分野への関心の高さを裏付けるように、戦略論の主要な国際学会であるStrategic Management Societyでは同分野のトラックが設けられております。

このようなミクロ的基礎について注目が集まる理由としては、ひとつは行動経済学に代表される心理的側面に着目した個人の意思決定、認知に関する研究の隆盛があるでしょう。経営学は、サイモン、マーチらの『経営行動』『企業の行動理論』などが出版されたその黎明期に組織の意思決定における個人の認知や心理的側面を考慮してきました。よって経営学は、基本的に、個人の意思決定、認知がもたらす組織の意思決定への影響に対する関心や理論面での親和性は高くあります。その土台の上に、近年の行動経済学などの新たな個人の意思決定、認知に関する発見を組み入れる形で、企業の意思決定者の行動を説明し、戦略論を再構築、発展させようという動きでしょう。

もうひとつには、経営学におけるマルチレベル志向の高まりがあげられるでしょう。企業は、その下位レベルの個人・チームから構成され、またその上位レベルの社会的制度から影響を受ける主体です。近年、経営学者が関心をもつ組織のひとつの特徴は、組織のマクロなレベルにおいても、人間の行為のレベルのミクロの動きがバタフライ効果のように複雑系で重層的に影響を与えあっているのではないのか、という点です。組織のマクロ・レベルの管理におけるミクロ的基礎の動きは、認知心理学や組織行動などの状況論などの分野と関連しているでしょう。また、現代の組織と人間の振る舞いを理解する基盤として、その行為のミクロ分野の焦点の解像度を上げた説明をするためには、補完する独自の問題設定、理論的メカニズムや研究方法・設計の工夫も求められるのではないでしょうか。

この特集の全体的な目的は、マクロ・レベルの戦略的意思決定をミクロ的基礎に関する知見に基づき新たに分析されることで、より明確かつ斬新な形で事象を描く理論を提示し、将来の研究像に対して豊かな機会を切り開くことです。我々は既にミクロ的基礎を用いた戦略論の展開について好例を多く知っております。例えば、Donald Hambrickに代表されるupper-echelon theoryは、経営陣の認知や心理的要因を理論的に考察することで戦略上の意思決定とその結果の関係性について豊かな理論的地平を拓きました。また、William Ocasioのattention-based viewについては、意思決定者の環境に対するattentionのあり方で企業行動が変わることを理論化し、その後に続く研究を生み出しています。さらに、Wiseman & Gomez-Mejia (1998)のbehavioral agency theoryのように既存のagency theoryに経営者のリスク性向に関する心理的側面を組み込むことで、より豊饒かつ説明力の高い経営者のリスク行動の理論を完成させ、コーポレート・ガバナンスについてのbehavioral theoryという視点での研究が展開されています(Westphal & Zajac, 2013)。これらの先駆者のように、この特集号から、ミクロ的基礎の視点を取り入れた新たな地平を切り開く戦略論の誕生を期待します。このミクロ的基礎の視点を取り入れた研究で多く見られる特徴は、既存理論を定性的なアプローチによるミクロ的な発見的事実基づきにより発展させている点です。定性的研究に強みを持つ者が多い我々日本の経営学徒こそ、このbehavioral strategyの分野に大きな貢献ができる可能性がより高いかもしれません。

このような主題に取り掛かる時、研究者は自身の研究の土台である研究方法とその視座を掘り下げながら、なぜそしてどのように戦略におけるミクロ的基礎を明らかにすることが可能なのかを問うことがひとつの道筋かもしれません。また、ミクロ的基礎研究の異なる理論的および経験的プログラムを定義することで、ミクロ的基礎の文献とその動きに直面する課題について批判的に議論することも重要でしょう。

本特集号について、用いられる分析手法について制限はありません。幅広く、知的に大胆な批判や挑戦をする論文投稿を募集いたします。以下に限定するわけではありませんが、いくつかトピックの例を挙げておきます。

1.経営者、トップマネジメントチームの個人的特性と企業レベルの意思決定の関係性

2.企業内の従業員・チームの相互関係からの企業レベルへの意思決定への影響についての過程と結果

3.企業間の個人レベルの関係に基づく企業レベルの関係、意思決定への影響についての過程と結果

4.中小企業やスタートアップなど、小規模で短期間の個人、チームの意思決定が広範囲の組織現象に影響を与える過程と結果

 

2. 特集号編集チーム

山田仁一郎(大阪市立大学)/山野井順一(早稲田大学)

 

3. 日程

論文投稿〆切:2019年5月31日(当日消印有効)
掲載号(予定):第53号第3号(2020年3月刊行)

 

 

4. 投稿の方法ならびに審査のプロセス

組織科学の通常の投稿規定にしたがった執筆および投稿をお願いします。なお、投稿にあたっては、封筒・フェイスシートに本特集号への投稿であることを明示してください。

審査は通常のルールに基づいて進められますが、審査プロセスにおけるSE(シニアエディター)の役割を特集号編集チームのメンバーが務める点が通常とは異なっています。そのために、希望SE制度は適用されません。応募の状況と内容によって編集チームのメンバーは追加されることがあります。また、発刊までの期間が限られていることから、通常の自由論題の場合に比べて、審査結果の通知内容が一部簡略化される場合があります。

特集号編集チームが、投稿された論文が特集テーマに合致しないと判断した場合は、著者に確認の上で、特集号向けではなく、自由論題として通常の審査ルートで審査させていただくこともあります。その場合は、上記審査日程が必ずしも守られるわけではないことをご了承ください。なお今回の特集論文公募では、学会員以外の投稿も受け付けます。

以上のことをふまえて、奮って下記にご応募ください。

 

送り先 〒101-0021 東京都千代田区外神田5-1-15

株式会社白桃書房「組織科学」編集部 特集号係 宛

 

 

参考文献

Abell, P., Felin, T., & Foss, N. 2008. Building micro-foundations for the routines, capabilities, and performance links. Managerial and Decision Economics, 29(6): 489-502.

Felin, T. & Foss, N.J. 2005. Strategic organization: A field in search of micro-foundations. Strategic Organization, 3(4): 441-455.

Foss, N., & Felin, T. 2006. Individuals and Organizations: Thoughts on a Micro-Foundations Project for Strategic Management and Organizational Analysis, Research Methodology in Strategy and Management: 253-288.

Felin, T., Foss, N. J., & Ployhart, R. E. 2015. The Microfoundations Movement in Strategy and Organization Theory. The Academy of Management Annals, 9(1): 575-632.

Powell, T. C., Lovallo, D., & Fox, C. R. 2011. Behavioral strategy. Strategic Management Journal, 32(13): 1369-1386.

Wiseman, R. M., & Gomez-Mejia, L. R. 1998. A behavioral agency model of managerial risk taking. Academy of Management Review, 23(1): 133-153.

Westphal, J. D., & Zajac, E. J. 2013. A Behavioral Theory of Corporate Governance: Explicating the Mechanisms of Socially Situated and Socially Constituted Agency. The Academy of Management Annals, 7(1): 607-661.

 

 

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